インタビュー | 2024.06.21
【社長インタビューシリーズ:船戸敬太】go out taxiの強みやエピソードを紹介します

2020年に創業した介護タクシー「go out taxi」。愛知県春日井市の社会福祉法人で介護士、生活相談員、ケアマネジャーと介護・福祉の経験を積んだ介護福祉士が代表を務める介護タクシー会社です。
今回は、go out taxiがもつ強みや具体的なエピソードを専門職の視点から紹介します。
◆船戸敬太(ふなと・けいた)プロフィール
2010年日本福祉大学卒業。2010年~2016年社会福祉法人愛知県同胞援護会特別養護老人ホーム春緑苑にて特別養護老人ホームの現場職員、主任介護士として勤務。
2017年~2019年単独ショートステイの専任生活相談員として勤務。数多くの緊急対応、虐待、困難事例に取り組む。
2019年~2020年デイサービスの生活相談員、ケアマネジャーとして勤務。
2020年介護タクシー「go out taxi」を創業。
専門職としての知識やスキルを活かした提案ができる
go out taxiならではの強みを教えてください
タクシー事業を通して困りごとに的確に対処できるところが強みです。利用者さんの困りごとを想像し、必要な社会資源の提案ができます。私たちは介護・福祉専門職の集まりなので、それぞれが経験してきた現場で培った知識やスキルをもっています。たとえば利用している時の様子から「この方は介護保険を利用したほうがいいんじゃないのか」といったことを想像できるのです。そういう方がいれば地域包括支援センターに連絡して、介護保険申請の必要があるかもしれないと伝えられます。また、ご家族もどういったところに相談したらよいのかわからないケースも多々あるため、担当者から直接連絡してもらって迅速にサービスへつなぐこともできます。
ほかにも救急車で運ばれた方が帰宅する際、お金を持っていないことがあるのですが、こういう事態はわりと容易に想像できます。そういった方に「ケアマネジャーはどなたでしょうか?」と聞いてみると、スムーズに利用後の手続きを進められることがあります。問い合わせ先も知り合いのケアマネジャーさんだったりするので、やりとりもスムーズです。
そういった部分で細かい自分たちの専門性や関係値などが役に立ち、強みになっていると実感しています。
一般のタクシー業者にはない視点で利用者を見る
一般的な介護タクシーの業者とどのように違うのですか?
一般の介護タクシー会社では、利用者さんのバックグラウンドや困りごと、さらにいえば介護保険が必要かどうかについて、考えながら業務にあたっている方はなかなかいないと思っています。一般的には病院や施設への移送がメインの業務ですからね。それこそ、「この方にはデイサービスが必要かも」「ショートステイを利用したほうが安心できそう」といった必要性について、想像することは難しいと思うのです。しかし、私たちはそういったニーズに気づけますし、サービス事業所に対しての提案もできます。「こういう方がいるんですけど、〇〇デイサービスさんでどうですか?」といったように。事業はタクシーですが、タクシーを通して地域における困りごとに対処する点が一般的なタクシー業者と異なると思います。そもそも、事業の入り口がドライバーではなく専門職なので視点が異なるのです。一般的な介護タクシーであれば二種免許から入りますが、私たちはまず介護・福祉の専門職からスタートしているというのが大きな違いですね。
利用者の背景に思考を巡らせる
同業の方々はどのような印象を持たれているのでしょうか?
「介護タクシーの会社なのに、一体何を目指しているの?」と聞かれたことがあります。
確かに二種免許があればできる仕事なのに、運転しているのは看護師、理学療法士、社会福祉士などですからね。タクシー事業者が行うには、私たちがやっていることはオーバースペックだと思われているのかもしれません。しかし私たちは、福祉を通した街づくりをやっていきたいと思っています。その取り掛かりとしてのタクシー事業なんですよ。
地域に必要なサービスは何かと考えた時に、デイサービスなどの介護保険事業所から始める方が多いと思います。もちろん必要なサービスではありますが、足元を見るともっと根本的なところから支援していけるのではないかというのが私たちの考えです。私たちは介護タクシーを通して個人や地域のニーズを満たしていきたいと思っています。
介護・福祉の専門資格をもっているからこそ、移動手段に困っているということだけでなく、入居施設での勤務経験で感じた実情や背景にまで思考を巡らせることができるのです。
緊急の案件にも専門性が活きた好事例
専門職が関わった仕事で強く印象に残っているエピソードを教えてください
看護師の関わりです。業務の幅がぐっと広がりました。看護師は痰の吸引や人工呼吸器の管理をしながらの移送に関わってくれます。病院でお看取りの方が亡くなる前に家で過ごしたいと思っていても、移送するタイミングってとても難しいです。今なら比較的状態が安定しているとはいえ、「じゃあ今このタイミングで自宅に」というわけにはいきません。看取り期で呼吸の管理をしながら移送することは大変なので。病院の看護師のケースでは、急な話だったので退院調整の看護師さんが移送車に乗ることもあったそうです。
でもうちは看護師が常勤でいてくれるので、急な要請にも柔軟に対応できます。病院の看護師が対応できない場合、おそらく多くの他社様ではフリーランスの看護師さんに前もって依頼し、計画的な移送の範囲で行います。しかし、タイミングとしては「本当に今」という時には対応できていないのが現状です。介護タクシーに常勤の看護師がいるというのは非常にニッチですが、オンリーワンの存在であってくれているので本当に助かります。末期の病変の方に対して看護師が対応できる介護タクシー業者がいると、地域の選択肢が増えるという意味でも良かったです。