インタビュー | 2024.06.22
【社長インタビューシリーズ:船戸敬太】go out taxiの利用者様のエピソードを紹介します
2020年に創業した介護タクシー「go out taxi」。愛知県春日井市の社会福祉法人で介護士、生活相談員、ケアマネジャーと介護・福祉の経験を積んだ介護福祉士が代表を務める介護タクシー会社です。
今回は、go out taxiを実際に利用した方の印象的なエピソードを紹介します。
◆船戸敬太(ふなと・けいた)プロフィール
2010年日本福祉大学卒業。2010年~2016年社会福祉法人愛知県同胞援護会特別養護老人ホーム春緑苑にて特別養護老人ホームの現場職員、主任介護士として勤務。
2017年~2019年単独ショートステイの専任生活相談員として勤務。数多くの緊急対応、虐待、困難事例に取り組む。
2019年~2020年デイサービスの生活相談員、ケアマネジャーとして勤務。
2020年介護タクシー「go out taxi」を創業。
「利用者さんにとって」のさまざまな外出
go out taxiでは、どのような目的での利用が多いのでしょうか
一番多いのは、病院から別の病院への転院です。そのため関わる時間としては短く、移送の間のわずかな時間となります。
しかしその中でも、たとえば数週間や一ヵ月ほど病院の中にいた方にとっては、転院時の移動も貴重な外出の機会です。日光を浴びて外の風を受けて「はあ~」って、なんともいえないいい表情をされているのを見ると、こちらも嬉しくなります。
私たちもそうですが、ずっと同じところに缶詰めでいれば気が滅入ってしまいますよね。
わずかな時間でも外出する手助けができることに喜びを感じています。
転院以外の移送ではどのような利用シーンがありますか?
外出支援として、結婚式の付き添いで介護タクシーをご利用いただくことがあります。
結婚式って、ご家族も着付けや親族紹介などがあるので、早めに現地に集合して一日中やることに追われています。
たとえば挙式や披露宴にとどまらず、列席の方への挨拶もしないといけないので、ご家族は大変です。
そのため、ご家族が利用者さんに一日対応する余裕がなく、結局出席をあきらめてしまうケースが多いのです。だからといって、自宅で一人にしておくこともできないので、ショートステイの利用を検討されることがあります。そんな時に私たちのサービスを利用していただくのです。
外出支援は大きなポテンシャルを秘めている
結婚式に参加できたことで、利用者さんに何か変化はありましたか?
何度も打ち合わせを重ね、タクシー降車後の支援にはじまり、帰宅するまで綿密に準備し対応したことで、利用者さんが外出に対して大きく自信をつけてくださいました。
「あなたたちがいれば外に出られる」と言っていただいたのです。
その後、結婚式への出席をきっかけに、立て続けに外出支援のご依頼をいただくようになりました。中でもご友人の家に行きたいとのことで、なんと春日井から緑区まで、約一時間の長距離ドライブをしたことが印象的でした。
利用者さんとご友人は約10年間、何かと連絡はとりあっていたものの、電話でのやりとりが主でした。
しかし、今回介護タクシーで対面できたことで、会えずに止まっていた10年の時が動いたのです。ツーショット写真も撮れました!
遠方であるため、ご家族に頼むのも難しいとのことで、今回支援できてよかったと思っています。
まさに介護タクシーがもつポテンシャルを感じました。
外出支援に関する世間の認知と実際
外出支援として結婚式に付き添いできるサービスがあるというのは、どのように世間に認知させているのですか?
今回結婚式の出席でご利用いただいた方の場合は、担当のケアマネさんからご相談をいただきました。ご本人が結婚式に出席したいと言っているからとのことでした。
ケアマネさんは、当社のInstagramを見て知ってくださったようです。
外出支援で利用する方は、全体のどれくらいの割合ですか?
転院や通院が月に350件程度で、そのうちの1割に達するかどうかといったところです。件数としてはほとんどありません。
介護のプロが行うからこそ可能な外出支援
利用者さんの結婚式の間、go out taxiのスタッフはどのように動いているのですか?
私たちも正装してご本人の横について、写真を撮るときに「こっち向いてくださーい」「フラワーシャワーですよー」と誘導したり、必要に応じて車椅子の向きを替えたりしています。あとは身の回りの介護を行っています。お手洗いの支援などですね。
結婚式は基本的に長時間ですが、最初から最後までつきっきりなのですか?
ケースバイケースです。体力的に不安がある方は、挙式だけ見て披露宴には出席しないこともあります。また、入所施設から出席する方もいるので、挙式のタイミングに合わせて出席していただくこともあります。
最初から最後まで参加される方もいらっしゃいます。
なじみの美容室でヘアセットするところから付き添い、式場では新郎新婦の軌跡の写真を見て、食事も用意していただき、お色直しまで見ていかれました。フルコースです。
利用者さんも嬉しかったでしょうね。新郎新婦やご家族の感想はどうでしたか?
みなさんそろって「よかった!」とおっしゃっていました。ショートステイの利用を考えていたけど、出席できてよかったと言っていただきました。
ご本人はいつも車椅子に座っていて、立ち上がる際にも「痛い、いたたた。」とやっとなご様子でした。しかし気持ちが前に向いているのか、親族紹介の時に順番が来ると、痛いとも言わず、しっかりと立ってごあいさつしてくださいました。
未知の力を発揮できたと思います。
人は環境が整った時にすごい力を発揮する
他にも印象的なエピソードはありますか?
糖尿病で片足を切断した方の外出支援です。
義足をつけて何とか通院するのですが、エレベーターがない3階から降りないといけない方でした。担架で降りる時に怖い思いをしたことがあり、取り回しも悪いので恐怖感が強かったので、階段昇降機を使って降りることにしました。
すると、案外楽に外出できたと感じていただけたのか、その後病気のコントロールもよくなり足も良くなってきたタイミングで、意欲的に外出できるようになりました。
「どんどん外出したい!今出ておかないと後悔する」といったように、こちらが驚くほど前向きになったのです。
買い物や喫茶店への外出もできるようになりました。通院の時も、ついでにどこかに寄ってから帰りたいといったように、目に見えて変化がありました。
「外出による効果は、環境が整った時にすごい力を発揮するんだ」と実感できました。
その方は今も利用してくださっています。